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山々、辺りの景色が雪に覆われ、一面が銀白色になった2月の冬。扉を開ければ琵琶湖で羽を休めながら、まもなく訪れる春の支度をしている水鳥たちの姿が臨めます。また、この景色の表情を見ることができる環境に感謝致します。いずれの季節も時間は同様に進んで行きますが、冬には、目まぐるしく動く暖かい時期では見出せない様々な動き、変化が私たちの周りで起きていることを実感させられます。

今回は、微生物や菌といったミクロレベルのことについて話をしたいと思います。

雪が降り積もる里山で菌打ち、栽培される原木椎茸は、気候状況にもよりますが、およそ1年と8か月を目処に収穫期を迎えます。その椎茸を育てているのはみなくちファームさん。自然が作り上げるものですから、毎回大きさにはバラつきが出るそうです。原木が椎茸栽培のとしての役目を担うのは3年間。2回の周期を終えると、原木たちはみなくちファームさんが育てている無農薬野菜の畑の堆肥となります。

畑を覆う、ぶ厚い雪の層。それを除けてあげれば、土の中で甘みをたっぷり蓄えた大根が顔を出します。「冬は生食でも美味しく頂けますが、乾燥させ切り干し大根にする準備もします。乾燥させることで甘み、栄養素が増すんですよ」と水口さんは言います。

静まり返った景色、大仕事を終えた畑とは打って変わって、酒蔵は繁忙期を迎えています。

作業は朝から晩までまさにひっきりなし。大小様々の全国の米農家から色々な品種のお米を取り寄せ、自家精米をしている上原酒造の上原さん。品種ごとに洗い、水の浸透・乾燥時間を1分、さらには1秒単位で管理することで、多種のお酒作りを可能にしています。

樽の中でお米の発酵を促す微生物は、温度変化にとても敏感です。発酵は熱が入れられることで生き生きとする微生物の活動であり、その力によってお米の甘みがどんどん引き立っていきます。ただ熱を加えれば良いというわけではありません。酒蔵の中の温度も大きく影響します。

この時期に福田屋が振舞うのは、ジビエの猟師から届いたお肉、みなくちファームの採れ立て椎茸などの旨味が混ざり合ったお鍋。お寿司の原点とも言われている、乳酸発酵によって作られるなれずし(*1)も冬のご馳走です。冬の自然が生み出した食べ物を味わうと、ここ滋賀の暮らしが季節と密接していることを身をもって感じることができます。

土の中で野菜を凍らせない暖かで穏やかな「熱」。

水を沸かし、お米の発酵を促す強い「熱」。

それらを育み、支える人の優しい「熱」。

熱はすべてに活力を与えてくれるのです。

 (*1)なれずしについて

日本古来の”鮓すし(なれずし)”。古代から琵琶湖産のニゴロブナ(煮頃鮒)などを主要食材として作られ続けている滋賀県(旧・近江国)の郷土料理である。冷蔵庫などなかった古代に動物性タンパク質を保存するための知恵として生まれた発酵食品である。

農家(原木椎茸):みなくちファーム
https://minakuchi-farm.shop/

蔵元:上原酒造
http://furosen.com/

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