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春情

冬を越え、あたりが湿度を取り戻しだす今の季節。近江の地面から、植物の新芽が顔を覗かせ始めます。その新芽をまるであやすかの如く、近くにある琵琶湖の水面はゆりかごみたいな穏やかな波を立てています。山菜などの食べ物の芽吹きは、季節の変わり目だけでなく、山や野原から新たな命が生まれたサインでもあるのです。

この時期の山菜採りは、1年の間でそうそう訪れることのない醍醐味。春の料理の代名詞と言えば、やはり筍ご飯が挙げられます。そのことに対して是非を問う必要はないでしょう。みなさんが大好きな料理なはずです。筍はごく普通の竹のそばに生えていますが、その姿を見つけるのは実際は難しい。探索するのに経験豊富な人は、ほんのちょっとした筍の隆起や、筍が顔を出す一歩手前の土の動きを見て狙いを定めます。そこから掘り越してみると、顔を出している部分やわずかな動きからは想像できないほどに、層が円柱状を成した硬い根が現れます。

野菜がしっかりと育つためには、その種類に合った環境が必要です。あまり手が行き届いていない山のなか、言うなれば原野のような場所ではワラビが育ち、より湿った環境ではコゴミが密かに育っています。その一方、みなくちファームさんの畑があるマキノから近い里ではスイカのような縞模様の葉を見せるユキノシタが、日陰のある岩場で地に沿って蔓を伸ばしながら潜んでいます。

春先の植物は、いずれもまだわずかな“息吹”。筍、ワラビ、コゴミ、ユキノシタ、そしてお寺の入口の澄んだ水の元で育つクレソンを探すには熟練による鋭い目が必要です。その地を深く知る誰かに頼れば、きっと在り処まで導いてもらえるでしょう。

採り立ての山菜と一緒にいただくのは琵琶湖で育った若鮎。琵琶湖にはプランクトンがあまり繁茂していないため川で獲れる鮎よりも体躯が小さいのですが、味はとても豊か。漁師が小さな船に乗ってひとりで漁をして獲った、厳選された魚たちです。

甘く、苦く、爽やかでもある春の自然からのさまざまな贈り物が福田屋の食卓で味わえます。

農家(筍、山菜):みなくちファーム
https://minakuchi-farm.shop/

漁師(鮎漁):中村水産
https://nakamura-suisan.com/

 

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