福田屋からのお知らせ 姉妹宿「うさぎ屋」予約受付中
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物語り

「近江の国はなお、雨の日は雨の
ふるさとであり、粉雪の降る日は
川や湖までが
粉雪のふるさとであるよう、
においをのこしている。」
 司馬遼太郎 

福田屋と出会い、ここに根をおろし、幾ばくかの時間が過ぎましたが、
季節が移ろう中でいつもこの言葉が心に浮かびます。
今津は、日本海からの荷を京都大阪へ運ぶ港として、長く栄えた宿場町でした。
その輸送ルートから生計を立てる商人を惹きつけた一方で、
創造活動に火をつける為の瞑想的な孤独感と刺激との出会いの両方を求めた執筆家や
詩人も魅了しました。往時には旧街道沿いに多くの旅籠や商店が立ち並び、
中でも福田屋は一番の店構えを誇り、今津のランドマーク的な存在であったと
当時の文献からうかがい知れます。

しかし、多くの旅人をもてなしてきたこの館も、時が経ち、
人やモノの流れが変わったことで、いつしか長い眠りにつくことになりました。
その福田屋を再び旅籠として蘇らせ、街道の賑わいを今の時代に合わせ、
取り戻していくプロジェクトが6年ほど前から始まり、解体・修復をへて、
今再び旅人を迎える準備が整いました。
古くは「近つ淡海」と呼ばれた琵琶湖が育んできた近江の自然は、四季を通じ、
実に多くの食材をもたらせてくれます。

琵琶湖で羽を休めた水鳥達が旅立ち、張りつめた空気のそこかしこに春のおとずれを
感じるようになると、野山には山菜や筍が顔をだし、酒蔵からは新酒が届きます。

頬を撫でる琵琶湖の風が心地よく、鮎は生まれ故郷の川を遡上します。
長い時間をかけ丁寧に焼き上げた鮎の香りが漂ってきたことで、
初夏を迎えたことを再度確認できます。

宿の囲炉裏に火がともり、紅葉の色が深まる秋になると、新米に茸、猪や天然うなぎなど、
この季節に旬を迎える近江の食材たちが続々と届きます。

そして、遠くに見える伊吹山を雪が覆いはじめる頃、
静けさの中に寒モロコを七輪で炙る炭のはじける音が心地よく鳴り響きます。

自然がこれほどまでに美しいものをもたらしてくれているのだから
余分な飾りつける必要を感じません。近くで採れた米や菜、
琵琶湖や山々から流れる川のものを引き立たせるべく、五味・五色・五法で。

琵琶湖の波紋と青々と広がる空を感じに福田屋にお越し下さいませ。