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海と、湖をつなぐ道

福田屋でお出しする海のお魚は、小浜で獲れたもの。この日、福田屋へやってきたきれいな桜色の甘鯛も主自らが小浜で仕入れてきたものです。

小浜は、古くは朝廷の食をつかさどる「御食国」のひとつで、日本の玄関口ともいえる湊町でした。その小浜から海産物や塩などの食材を京都まで運んだ主要な道が、福田屋正面の九里半街道でした。小浜と今津の距離が九里半(約38キロメートル)だったことが街道名の由来となっています。

福田屋を出て通りを南へ歩くとすぐにあるのが住吉神社。湖上船運の安全を願い、建てられた神社です。

ほんの三世代前までは物という物が人や馬、牛、そして船によって運ばれていました。琵琶湖には荷を載せた多くの船が行きかい、今津はその主要な湊として栄えた町でした。いつもは穏やかな琵琶湖とはいえ荒れる日もあります。昔の人たちにとって湖上の安全は生活に直結する切なる願いだったのでしょう。今は今津の人たちの暮らしを、静かに見守ってくださっています。

 

古くから豊かな食材に囲まれる今津に位置する福田屋では、海のもの、山のもの、そして湖のものが混ざり合います。

この日は春の訪れを感じ始めていた4月初旬。甘鯛のほかに、近くの山へ出て収獲したこごみや筍、そして近所の川魚屋で仕入れた氷魚を抱え、主は福田屋に戻ってきました。

海、山、湖の幸が主の手によってカタチになっていきます。

パチッ、パチパチッと鱗のはぜる音。炭の香ばしいにおい。

器にもられた甘鯛とこごみの炊き込みご飯を口にふくむと、ほんのり炭の香りがした後に、カリっとした鱗と柔らかなこごみの食感があわさり、春の幸せを感じました。山椒のきいた氷魚と筍の和え物も、春らしい爽やかな味わいでした。

季節の移ろいに合わせ様々な食材に触れることのできるここ今津で、あらたな季節の到来をいちばんに待ちわびているのは主かもしれません。

本日の福田屋ではとうもろこしや青梅、琵琶湖で採れたすっぽんと鮎、そして小浜から今日も仕入れた甘鯛が食卓を彩ります。気づけば春が過ぎ、夏がすぐそこに来ているようです。四季だけではなくより細かい季節の移ろいを、そしてその豊かな移ろいを福田屋のカタチでお楽しみいただけたらと思います。

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