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新茶の季節です

「どうぞどうぞ、中へ〜」──。

そう言って出迎えてくれたのは、安政5年に創業した「中川誠盛堂茶舗」の5代目店主の中川武さん。

中川誠盛堂茶舗の店内には、煎茶だけでも100種類以上あります。近江のお茶を中心とした自然に近い栽培方法でつくられた茶葉を取り扱い、添加物は一切不使用で、パッケージには産地と生産者と記載して販売されています。また、茶葉本来の奥深さや品種や作り手によって異なるお茶の個性を味わってほしいという思いから、シングルオリジンにこだわっていると言います。

初夏のある日、福田屋でお出しするお茶を求めて、中川さんを訪ねてきました。

中川誠盛堂さんではいつもこだわりの茶器で、その時期おすすめのお茶を振る舞ってくださいます。ここへは仕入れ目的で来ているのですが、新しいお茶との出会いと中川さんとの会話が楽しく刺激的で、ついつい長居してしまいます。

中川誠盛堂茶舗さんに初めて来たときのことは、今でも鮮明に覚えています。

初めて訪問した際に朝宮茶を振る舞っていただいたのですが、その味が忘れられないほど美味しかった朝宮茶に似ていて。

「このお茶は前に京都の御所東の茶屋で飲んだ朝宮茶と同じ味がします」とポロッと口に出したんです。そうしたら中川さんが「よく分かりましたね。うちから卸しているものです」と。その時は「見つけたー!」という感じで、嬉しくて興奮してしまいました(笑)。

朝宮茶とは、滋賀県の信楽町朝宮にある茶畑で栽培されるお茶のこと。

朝宮茶は宇治茶(京都)、川根茶(静岡)、本山茶(静岡)、狭山茶(埼玉)に並ぶ日本五大銘茶のひとつとして、古くから愛されてきたお茶です。朝宮は日本茶の発祥の地とも言われており、最澄が805年に中国から持ち帰ってきた一握りの茶種を比叡山の麓に蒔いて育ったのがはじまりと言われています。

日本のお茶の祖である朝宮茶は、苦味の中にあるほのかな甘みが特徴。朝宮は標高400mの高地にあり、冬の寒い時期は氷点下を下回ることもあります。そんな寒さが厳しい環境で育った朝宮茶はより香り豊かになり、甘みが増すことで美味しくなるのです。朝宮の新茶の収穫は5月上旬に始まります。「今年の朝宮茶は最高の出来ですよ」と言いながら、中川さんは茶葉を嗅がせてくれました。

「この香りこそが朝宮茶の特徴なんです!」と大絶賛。中川さんがそうおっしゃるからには、今年の朝宮茶は最高な出来栄えに違いありません。

福田屋ではじつは料理にもお茶を使わせてもらっています。近江牛のミンチを中に入れた「筍のしんじょうのあん」は「鳳凰単叢 蜜蘭香(ホウオウタンソウ ミツランコウ)」を使用。あんにお茶が加わることで香り豊かになるだけでなく、お肉の脂をさっぱりと流してくれる効果もあります。

料理とお茶の組み合わせを考えることは最近の楽しみのひとつ。中川さんが淹れてくれる美味しいお茶を飲みながら、お茶の歴史や旬のお茶の出来栄え、作り手さんのこだわりといった話に耳を傾け、お茶と料理の組み合わせに思考をめぐらせる───。なんと贅沢な時間でしょうか。

私が長居している間、平日の昼にも関わらず老若男女のお客様が次々と来ては帰っていきました。みんな、本物を知る中川さんが選ぶお茶を求めて、このお店を目指してきた方ばかり。大抵のものはインターネットで家にいながら手に入れられる時代ですが、ここはわざわざ訪れる価値のあるお店です。

そんな中川誠盛堂茶舗は大津駅から徒歩5分、大津ICから車で5分の立地にあります。

福田屋にお越しの際はぜひ立ち寄ってみてください。きっと中川誠盛堂とお茶の世界の虜になるはずです。

中川誠盛堂茶舗

Webサイト:中川誠盛堂https://seiseido.com/

所在地:〒520-0043 滋賀県大津市中央3丁目1−35

Google Map:https://goo.gl/maps/VY23ozCESkvvebev8

福田屋主人 西村一樹

Photo by Masaki Ozaki

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